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「これって人権あるのかな?まぁ、どうでも良いけど」
「ティーが良いなら…まぁ、良いけどな…」
凄ぇ、納得し辛いけど。
パチリ。
「で、国の研究者と一緒に住んでるんだけど」
「はぁ?同居してんのかよ?!」
「?うん。保護と監視と観察のため、って」
「はぁ〜〜。うん、分かった。とりあえず聞く。で?」
「で、その同居してる人が曲さんって言うんだけど、昔長く付き合った人が関西人で変に関西弁が移ったって。言葉は標準語なのに、イントネーションだけちょっと関西が残ってる」
「へぇ〜。で、それがティーに移ってるって?」
「うん、そうみたい。気持ち悪い?」
サラッと聞いて来た。
うーん…苦し紛れにここで。パチリ。
「…いや。違和感はあるけど、直すようなことでもねぇだろ」
「そう?ありがとう」
ありがとうの『と』上がるイントネーションよりも、簡単に、気持ち悪い?って聞ける方がよっぽど驚いた。
顔には出さないけど。
俺は、昔からそんな言葉が苦手だ。
明らかに相手を傷付ける言葉。
もし、うん、って言われたとしたら、ティーは傷付かないのか?
それとも言われ慣れてしまってる、とか?
ほら、小さい頃、自分が言われて嫌なことは言うな、って言われただろ?
俺は、自分が傷付くのも傷付けられるのも嫌だ。だから、良くも悪くも曖昧に生きている。
ミーンミンミンミン…
ジージジジジジ…
「あ、白野くんと木嶋くん」
「え?」
手を振るティーが見えたらしい。
真夏のグラウンドで立ち止まる2人は、校舎を見上げて眩しそうに手を振り返していた。
今グラウンドにいるってことは、3時間目水泳だったんだろうな。
「…良いなぁ」
ぽつり、小さくティーが呟く。
「何が?」
「え?」
「何が良いな?」
「え、ううん」
にこりと笑って誤魔化された。
パチリ。
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