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基本的に挨拶とかは元気よく、かつ鬱陶しがられない程度でした。こういう小さな気配りが会社とかの合格に繋がるのだ。
知らないけど。
「あー、こわぁ……」
面接は終わったというのにする前よりもひどく震えを催す。
まるで今からが本当の面接のような、そんな感覚が体を駆け巡った。ボクはさっさと家に帰って推しに癒されたい。
少々駆け足でルンルン歩いていると、
「ひゃっ」「うわっ!?」
ボクは誰かとぶつかってしまった。
「ごめんなさい!お怪我ないですか?」
「大丈夫。貴女こそ怪我はない?顔に傷がついたら大変……」
「べ、別に大丈夫ですよ」
ボクは男なのに一体なぜ顔に傷をつくことを恐れるのだろうか。男の顔に傷がついたところでイタい装飾程度くらいなのだが……。
まさか、ボクのことを女子と勘違いしている?
昔から男子が好くようなものが嫌いだった。逆に女子が着るようなオフショルダ—とか萌え袖パーカーとか、そういう女子が着がちな服を着ていた。
また、髪も世の男子と比べれば中々に長い。
ショートより一回り長いくらいの髪、そして親の影響で滅茶苦茶手入れされたつやつやの髪質と肌。
これらすべての要因が重なり、ボクはどうも女子と勘違いされている。
……らしい。ボクは男性自認があるから男子としか見えないのだが……。
「面接帰り?どうだった?」
「えと、正直……わからないです」
ボクは苦笑いしながらそう答えた。
自信の無さは昔からだが、面接において手ごたえなんてものはアテにならない、と思う。
自信があるやつ程落ちるのは今まで嫌というほど見てきた。
「そっか。受かってるといいね!」
「……っ、はい!」
ボクはできるだけ元気よく笑顔を返し、そのまま帰路に着いた。
今の心の中は、何処か晴れやかな気分がうずいていた。
──面接の日から、1週間が経過した。
その間相も変わらずの生活を続けていた。
今は学校の課題をこなしている最中。
もしStLeaveに合格したときのことも考慮して、ボクは全日制から通信制に変えた。
元々どこかの事務所所属になることは人生像として決定していたから、いつでも全日制から通信制に変更できる高校に入学していて良かったと思う。
ほんとマジで。
数学のレポートをつらつらと綴っていると、ピロンと着信音が鳴る。
少し前に聞いた、あのメールの着信音。ボクはそうと確信してメールフォルダを開く。
すると、そこには新着かつ未読のメールが一通。
宛名を見ると、StLeave運営から。きっと合否判定なのだろう。
緊張で流れる汗、期待で高鳴る心。どちらもを閉じ込めてボクは便りの封を破った──。
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