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「おかしければ笑うがいい。信長は笑われ続けて強くなった男だ」
信長はそっと立ち上がった。
それを見て住職はニッコリと微笑んだ。
「何じゃ、もう帰るのか…。茶も出さん寺には長居は無用か」
信長は住職を振り返った。
「此処に信長がおる事を見られたら住職も危なかろう。日ノ本一、敵の多い男じゃからな」
境内に繋いだ黒獅毛に上半身裸のまま跨った。
「今度来る時は土産でも提げて来る。それまでくたばるなよ」
信長は馬の腹を蹴るとゆっくりとその小さな寺を出て行った。
「土産などよい。お前ならいつでも歓迎するぞ」
住職は信長の背中を見て大声でそう言った。
それを聞いて信長は黒獅毛の腹をまた蹴り、城へと向かう道を駆けて行った。
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