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「何、風呂伊が来とるのか…」
信長は廊下を足早に歩きながら、傍に付いて歩く木下藤吉郎秀吉に訊いた。
「はい。先程到着されました。何でも京都に滞在しておられたとかで…」
信長は廊下を歩きながら着物を脱いでいく。
「わかった。湯浴みをする。その後で会おう」
秀吉は立ち止まり信長の脱いだ着物を拾った。
褌一枚になった信長は立ち止まり、秀吉を振り返った。
「風呂伊には食事を出しておけ。何、特別豪勢な食事などいらぬ、風呂伊は粗末な食事にも慣れておるからな…」
信長は褌を解き秀吉に投げ付けると風呂に入って行った。
秀吉は信長の褌を拾うと、従事する侍女に渡した。
「風呂伊殿に昼飯の準備を…。良いか、風呂伊殿が見た事も無い様な豪勢な食事をお出ししろ」
侍女は頭を下げて音を立てぬ様に廊下を摺足で歩いて行った。
秀吉はその侍女の後ろ姿を見て微笑むと、裏庭の風景を眺めた。
「殿は風呂伊殿に何を探らせたのだろうか…」
そう呟くと秀吉は風呂伊の待つ部屋へと歩いた。
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