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 19時から0時までの営業中はクリスマスパーティ。料理はブッフェ形式にしてワイン3酒類とソフトドリンクは2時間制の飲み放題。9時半で前半のお客様は終了。その他のドリンクは別途で注文を受け付けることにした。  燻銀が定休日の風音には臨時のアルバイトをお願いして、ドレスアップして来て貰うことにしたのだ。俺も、店内で蝶ネクタイを付けることにした。   いつもの定員は15名だけれど、今日はカウンターの席を少し詰めて17名。   2名以上の申し込みで、事前にチケットを渡すことにした。それなら、事前にこちらもお客様を把握できるから、面倒なことにはならない。  店の入口には、予約の受付とともに特別営業のお知らせを出しておいた。お知らせからほどなく、全ての席の予約が埋まった。時間帯はこちらで決めて、常連さんは感謝の気持ちを込めて、前半か後半か希望を取って振り分けることにした。  当然のように帯刀さんご夫婦もいらっしゃる。良いお酒も仕入れておいた。おそらく二人の思い出のカルバドスも。  せらさんのおかげで、酷く迷惑を被った。けれど、俺と風音が一緒にいたら、これから先また新たな障壁があるかもしれない。年の差も俺の仕事も、両親の反対の材料になるかもしれない。彼女の目標の実現だって、二人の仲の障壁になり得る。  乗り越えることができただろうこの経験を、プラスに変えるしかない。  風音に愛される得る自分自身であること。  風音を守れる自分自身であること。  強いているわけじゃなくて、そうありたいと思う。  初めて人を好きになったことも、風音の思いも、俺の思いも、眩しすぎて見えなくなってしまうことがある。  恋は盲目って、いろんな意味合いがあるのかもしれない。  でも、ずっと一緒にいたいという思いを大事にすれば、きっと。  お客様と談笑する風音はいつもに増して綺麗だ。俺の視線に気付いて微笑んだ彼女に、俺も微笑み返す。  帯刀さんご夫婦に『新婚夫婦が切り盛りしてる店みたい』と言って貰えた。漏れ聞いた他のお客様から、拍手や歓声まで。  周りの人にも祝福される幸せを手にした日。  俺たちの喜びが、周りの人も幸せな気持ちにさせられるといい。  そんなことを願った。  Happy Christmas! fin.
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