ファーストキスの理由

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ファーストキスの理由

 そうした夜が続き、鷹城も限界が近かった。  このまま年を越えるのは心身共に耐えられない。嫌われたならそれでいいから――いや本当は良くないが――、中途半端なこの状況は辛すぎる。とにかく気持ちを伝えて、真琴の返事を聞きたい。  それにもう一つ、鷹城は疑問に思っていることがあった。あのクリスマスの夜、なぜか真琴は自分からキスをした。  彼はファーストキスを大事にとっておいたはずだ。なのに、どうして鷹城に口づけたのだろう。真琴は好きでもない相手にキスをするようなタイプではない。その理由が知りたかった。  答えによってはかすかな希望が持てるかもしれない、と鷹城は考えていた。もしかしたら、真琴も自分を少しは好いてくれているのかもしれない。そんな淡い期待に縋(すが)っていたのだ。 (本当に俺ってしつこいっていうか、諦めが悪いよな……)  こうして無事に恋人同士になった今でも、当時の自分を思い返してそう思う。  そして、とうとう大晦日に真琴に会いに行った。  偶然行きあった真琴は、少し痩せたようだった。鷹城と目も合わせもしない。その暗い表情に、ズキリと胸が痛んだ。  たった一週間離れていただけなのに、彼を目の前にすると愛おしさが溢れた。そしてつい真琴の頬に触れようとする。そうしたら、彼は明らかに拒絶した。  その反応を見て、絶望で目の前が真っ暗になった。もう終わったのだ、やっぱり真琴に嫌われた、と思ったのである。  泣きそうなのを我慢して、なんとか気持ちを伝えた。  これで最後なのだと思いながら帰ろうとしたら、なぜか理子が現れた。彼女と真琴の間には因縁があるようだ。  しかし理子が彼の何かを刺激したようで、真琴は突然大きな声で「先生が好きだ」と言ってくれた。  あの時の驚きと、幸せは言葉に出来ない。信じられなかった。嬉しくてうれしくて、まるで青春まっただ中の高校生のような喜びようだった。  好きな人と両想いになる。それはなんて大変で、難しく、また抱えきれない程の幸福をもたらすものだろうか。  理子を成敗した後、二人でマンションに戻り、日付が変わるまで真琴を抱いた。  好きで好きでたまらなくて、あの細い体に自分のものを埋め込みながら、感じすぎて涙を流すまで揺さぶった。真琴が「先生、好き……」とささやくたびに歓喜で震え、頭が煮えそうになる。  途中、「今のを初めてのエッチにしよう」と可愛いことを言う真琴にあおられて、無様に暴発する、というハプニングもあった。けれど最高の夜になった。  渡せなかったクリスマスプレゼントのネックレスも無事に贈ることが出来た。真琴が目を潤ませながら喜んでくれるのを見て、ここ一週間の苦しみがスーッっと消えたのを覚えている。  二人で零時ぴったりに「明けましておめでとう」と言い合って、これ以上ないくらい幸福だった。 (ああ、俺って本当に幸せ者だ……)  あれからもう三ヶ月ほど経つが、愛する気持ちが止まらない。真琴が可愛くて、好きで、ひとときも離したくない。ずっとキスをして、腕の中に抱いていたい。  セックスはほとんど毎晩で、昨日もしつこく可愛がってしまった。そのせいか、今朝真琴は起き上がれなかった。 ――腰が痛くて立てません。先生のせいですよ。どうしてくれるんですか。  と赤く潤んだ瞳で責められて、本日の食事当番は鷹城になったのである。 (うらめしそうな顔してるのも可愛いんだよな……)  と、愛おしい年下の恋人のことを思い出し、つい頬が緩む。それを見て、白川が呆れたような目をした。
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