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昔から人より鈍くさかった。
学校の成績は中の下。運動も同様。
人と馴染むのに時間がかかるので、いつも友達グループに入りそこねる様な子供だった。
よく先生には「もう少し自分から人と接するように頑張ろう」と言われたが、そう言った先生にすらもじもじしてしまう。
クラスのカースト上位に度々目をつけられて、虐められた。
「井川くんが居たから、試合に負けたんだよ」
球技大会で負ければそんな事を女子に言われた。
上の兄は優秀で可愛がられていた。
下の妹は病気がちで、父や母はいつも心配していた。
真ん中の自分には「いつもありがとう」と、言ってくれたが彼らの中で「手のかからない、でも普通の子」の自分は注目されることもなかった。
愛情を感じなかった訳では無い。
でも比較しなかった訳でも無い。
価値をどこに見い出せば良かったのか、分からなかった。
どこかいつも怯えるように、せめて誰の迷惑にもならないように注意していた。
いつも一人で校庭の片隅に咲く花を見たり、図書館で図鑑を眺めたり、中庭で飼っていたアヒルを見ていた。
足の早い虫は捕まえられないので、石の影に隠れたダンゴムシくらいが観察にちょうどよい。
雨の次の日、カンカン照りの中取り残されたように殻に閉じ籠もるカタツムリをそっと草むらに帰して、彼の将来を案じた。
誰とも関わることができない自分を、そうして慰めていたのかもしれない。
小さな生き物たちに触れながら、自分の価値を見出そうとしていたのかもしれない。
そういう人間だった。
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