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電話に出てみると、昔からの親友である和人だった。
『新作決まったんなら飲み行くぞ』
突然の飲みの誘いだった。
飯に行くのは全然いいのだが、新作が決まった事を何処から聞いたのか。
大凡の予想はつくけれど。
新作発売日の前日、8月31日。
僕は親友和人と、和人に新作決定の情報を流したであろう夏海と3人で飲みの場にいた。
「和人2年ぶりの新作か?めでたいな!」
「本当に!めでたい、めでたい」
和人と夏海は言う。
夏海は、大学で知り合った唯一の女友達だ。
僕が小説を書いている事を知り、出版社を紹介してくれた人物でもある。故に僕の担当者と繋がりがあるのだ。
これで何故、和人が新作決定の事を知っているのか理解出来ただろう。
そう、僕の担当である田端さんと夏海は繋がっており、僕が立てたプロットの事、新作の進捗状況等など、全ての情報を把握している。
至って普通のように言っているが、正直怖い。
「夏海、また和人に情報流しただろ」
「なんの事かな〜」
2年前も同じ様な会話をし、誤魔化された記憶がある。
「お、俺は夏海から新作決定の事なんか、き、聞いてね〜ぞ?」
「………」
こいつはこいつで嘘が下手である。
「まぁ、いい。乾杯しよう」
僕はそう言って場を収め、乾杯へと促す。
『乾杯!!』
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