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プロローグ①
私は3度のご飯よりも、乙女ゲームが好き。
不仲な両親は滅多なことがない限り、家には帰って来ず、中学生の頃から一軒家にひとり暮らしの状態。そんな私を楽しませてくれたのが――乙女ゲーム。
もう、どっぷり、乙女ゲームの沼にハマっている。
毎月の生活費はどちらかが振り込りこんでくれるし、高校生になってからはバイトもはじめ、新作の乙女ゲームはほぼ毎月追えている。
節約料理だって覚えた。大、大好きなジャガイモを特売の日に買いだめして、電子レンジでレンチンしてから冷凍保存しておけば。いつでもコロッケ、ポテサラ、肉じゃがといったジャガイモ料理が作れる。
でも1番好きなのはファストフードのフライドポテト、ハッシュドポテト――お菓子はポテチ。蒸したじゃがバター、カリカリに焼いたガレットは群を抜いて好きだ。
コンビニのバイト帰り、サッと食事とお風呂を終わらせて「遊ぶぞ!」と、ベッドに飛び込み。ポテチを片手に乙女ゲームを夜通し遊び、寝落ちするのが日課。
こうも、乙女ゲーム漬けの生活も長いからか、さいきんはゲームの夢を見るまでになっていた。
……
……ん? ま、眩しい。
眩しい光を感じて瞳を開けた瞬間、飛び込んできたのはキラキラな世界。おお――さてさて今夜はどの乙女ゲームの中かな? もう夢に見るのも慣れたもんで、呑気に自分の容姿のチェックからはじめた。
ほぉ~。
このふわふわなストロベリーブロンド、赤毛、ジンジャー色とも言われる髪は『魔法学園、私はあなた達と恋に落ちる』の"悪役令嬢マリーナ・カッツェ"だ。
そうだとすれは、この舞踏会とブルー色のドレス姿は……学園生活の終わりの舞踏会か。
ええ、なになに!
私って今宵の舞踏会で、婚約者に婚約破棄とかされちゃうわけ? 楽しみ! ウキウキとドレスをひるがえし。まだ会場に来ぬ婚約者とヒロインを、立食コーナーの料理を眺めながら待つことにした。
(お、これはローストビーフ? ムニエル? ……あージャガイモを使った料理はなしか……残念)
「すみません、このローストビーフ厚切りでください」
「かしこまりました」
コックから分厚いローストビーフがのったお皿を受け取り、近くの壁際に立った。この世界が夢だって知ってるけど、ついつい食べたくなっちゃうのよね、
――ん、ローストビーフ美味しい。
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