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62話
日課の早朝ジョギングはお休みにして、シラさんが御者席で操る馬車で、私とヴォルフ様、トラ丸たちと王都へと向かっていた。ヴォルフ様の聖獣クロ君とシラさんのポ君は地を蹴り、空を飛び私達を護衛中だ。
トラ丸は頭の上で(お昼寝)じゃくて、私の護衛を一応してくれている。
「1時間後、朝食を摂ろう」
「かしこまりました!」
《メシ!》
《ご飯》
《ポ、がんばる!》
私はみんなの分の朝食と。まだ、まばらな魔力だけど魔力石を何個か。メイドのパレットさんにお願いして、ワンピースに付けて貰ったポケットにどっさり入れて持ってきている。
(何日が前、パレットさんにポケットをつけてとお願いしたら、驚いていたけど。あると便利だと思うんだけどなぁ)
ワンピースばかり、見ていたからか。
「マリーナの髪型とワンピース可愛いね、似合ってる」
「ありがとうございます……ヴォルフ様もステキです」
私はお団子ヘアーと白いシャツと水色のスカートのワンピース姿。ヴォルフ様はシャツと黒いベスト、黒のショートパンツを着ていた。
「そうだ、昨日言っていたアレを渡さないとね」
《アレ? アレを、早く見せてくれ!》
私よりも気になっているトラ丸が、ヴォルフ様の席へ飛び乗った。彼はアイテムボックスから小さい箱と、小さな肩掛けのカバンを取り出した。
先に小さい箱を開き。
「マリーナ、左手を貸して」
「え? は、はい」
ヴォルフ様は小さい箱を開き、中からシルバー色の指輪をとり出して、私の小指にはめた。その指輪は小指より若干サイズが大きいと思った次の瞬間。そのシンバーの指輪はシュルシュルと縮み、私の小指にピッタリはまった。この指輪って、ヴォルフ様とお揃いの指輪⁉︎ ということは……魔法の登録が出来る魔導具じゃない。
「ヴ、ヴォルフ様?」
「驚いた? ほんとうは来月のマリーナの誕生日に渡そうと思っていたんだけど。今日は必ず、この指輪が必要になるから先に渡すね」
「ありがとうございます、嬉しい! でも、この指輪が必要になるの?」
「なるね。デリオン王子はこの指輪を見てもまったく気付かないだろうが。ゲドウさんは違う。この魔道具の指輪をみて、彼なら気付くだろうね」
ゲドウさんが何に気付くの?
そこ聞いてもいいのかしら?
《よかったな、マリ。大切にするんだぞ》
「うん、もちろん大切にするけど……」
「いま、贈った指輪はね。マリーナと僕が"親愛なる友達"だっていう証拠だよ。クエルノ国では大切な人に送る指輪なんだ」
大切な人に送る指輪。
「あと、これはマジックバッグ。この中に30個ほどモノがしまえるから」
「マ、マ、マジックバッグ⁉︎ だったら、これしまえる?」
私はワンピースのポケットに手を入れて、ゴロゴロと両手いっぱいの魔力石を取り出した。
「「⁉︎」」
その姿を見たヴォルフ様とトラ丸の顔は笑っているが。その瞳は……また、魔力石をそのままの状態でポケットに入れてきたって、呆れた瞳じゃない?
「え、えっと。その。す、すぐ使えるようにって……持ってきたの。すぐ使えるでしょう?」
「すぐ使えるが、面白い発想……クッ、クク……ハハハ、ハハ! マリーナ……その大胆さ。すごくマリーナらしくて、いい!」
いままで以上にお腹を抱えて笑うヴォルフ様と、冷ややかなトラ丸。
《マリ……ポケットになんでも物を入れる癖。なおっていないんだな》
「え? なんでも物を入れる癖? そんなのあった? あ、ああ……あったかな」
パーカーを着た日は特にひどがった。お財布、ハンカチ、ポケットテッシュは勿論。貰ったチラシ、飴、スマホ。トラ丸にあげるチュルル、カリカリなどのオヤツ各種。ポケットがパンパンだった事を思い出した。
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