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死神曰く、今日で俺は死ぬらしい
「おはよ! いい朝ね。死ぬにもってこいの日、ラッキー! ラッキー少年って呼ぶね!」
「……勝手にあだ名つけんな」
ずしん。
腹に重い物が乗っかかり意識が覚醒する。薄く開いた目に朝日が差し込み、寝転がる雅人にまたがる女がうつる。最近、見慣れた朝の光景となった。
ポニーテールにした派手なピンク髪。小悪魔的な魅力があるが、雅人にとっては悪魔だ。
「重い」
「えぇ⁉ 可愛らしく起こしたのに酷い!」
どこがだ。
一見、幼馴染みやらが主人公を起こす王道ラブコメの一幕かもしれない。全く違うが。
時計を見れば起床時間まで猶予がある。よくも貴重な睡眠を邪魔したな。
「今日死ぬきみのために早起きさせてあげたの! 寝て過ごすなんてもったいない!」
怒ったように頬を膨らませる。可愛らしいが見た目年齢高校生、自分と同じくらいの女にしては幼い。
何度も――それこそ耳にたこができるぐらい聞かされた話に辟易した。
彼女を押しのけて起き上がる。彼女は軽く悲鳴をあげて、ベッドから転がり落ちた。わざとらしい。
「死ぬ気はないって言ってるだろ」
「死ぬんだよ」
女の雰囲気が、ひやりと冷たくなった。彼女がにたりと、嫌な笑みを浮かべている。ふわふわと体を浮かせながら。
「きみの担当死神の私が言うんだからそうなの。運命は簡単には変えられないんだよ。きみは定められた方法で必ず死ぬ」
顔をずいっと近づけてきた。浮く――人間にはできぬ芸当。彼女の存在は非現実的だ。
雅人は痛む頭を抱えたくなった。
――彼女が目の前に現れたのは一週間前。
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