死神曰く、今日で俺は死ぬらしい

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「もう二度としないで!」 「……はい」  病室。個室で母の説教と懇願を、雅人は甘んじて受ける。 「火事の中に飛び込むなんて無謀だ。そういうのは消防の人に任せればいい。クロが心配だったんだろうが結果、人様に迷惑をかけることになる」  父の正論パンチに、反論などなく頷くしかなかった。  ――あれから。  雅人の予想は見事的中した。定められた死に方以外ならば生きる可能性があったらしい。  二階の高さでは人は死ねない。なんなら植木に突っ込んで、ほぼ無傷に近かった。クロも無事である。  雅人は満身創痍だったが、死ぬ覚悟が馬鹿らしくなるほど、呆気なく生きた。  クロも獣医が驚くレベルで回復して、今では元気に走り回っている。入院している雅人の方が重傷であった。 「お母さんどうしようかと」 「あー、そういや、火事の原因ってなんだったの」  不自然であろうと話をすり替えようと、咳払いをして気になっていた原因を聞いた。  雅人の疑問に答えたのは父親だった。 「隣の家、煙草の不始末らしい」 「え、じゃあ燃え移ったの?」 「なんでも道が混んでいて消防車が来るのが遅れたらしくてな」 「……隣の家、燃えてたっけ」 「あんたって子は」  母が般若のように目をつり上げた。 ベッドに横になった雅人は、動きを制限されており逃げ道はない。  悪いのは雅人で、心配もかけたのもわかっている。反省するしかない。  それから母親は面会時間ずっと火事の危険性を説明して、最後には生きていて良かったと涙しながら帰っていた。  その後は親友が「心配かけさせてんじゃねーよ!」とキレ気味に叫び「こら、病室では静かに」と担任が叱るという騒がしいお見舞いが来た。  他にもクラスメイトや近所のおばさんまで来て、自分は恵まれている事実に胸が熱くなる。  死ぬはずだった日が終わっても、この世で彼らと笑い合える幸福を噛みしめた。
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