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学校から帰宅後、自室で受験勉強に勤しんでいたときだ。
突然、彼女がクラッカーを鳴らしながら現れたのだ。
おめでとうございまーす! このたび死ぬ運命が決定いたしました! つまらぬ世界から解放されます、こんなに早いなんてなんて幸せものだろうね!
福引きか何かに当選したごとく。
事実、ベルをけたたましく鳴らしていた。ふざけた女が、侵入した気配もなく目の前に現れたのだ。
椅子から滑り落ちて目を白黒させる雅人に、ふわふわと浮きながら、きょとんとして数秒。そして。
『あ、れ? ひ、ひょっとして見えて、あははんなばかな……いや見えてるね、目合ってるよね、まじ?』
やば怒られる。まじか、見えるとかあんの。
呟く女を、雅人は呆然と見つめる。
それが二人の出会いであった。
それから雅人は死ぬ運命にあり、雅人の担当死神だから死ぬまで一緒にいる……一方的に女は有言実行した。
四六時中片時も離れず、目障りな蠅のごとく飛び回って騒いだ。周りには見えていないし聞こえていない。
何度も授業の妨害にあった。受験生の勉学は、未来の自分の命にかかっている。
女は「大学生になる前に死ぬのに意味ある?」とほざいた。雅人が紳士でなかったら殴っていた。感謝しろ。
「本当に今日死ぬのか」
制服に着替えて、洗面所で身支度を調える。
「死ぬとか……自殺するとでも思ってんのか」
「自殺するタイプじゃないでしょ」
「絶対しない。未来に希望を持つ健全な青少年なんで」
「きも」
女は雅人をじとりと睨みつけてから、ぷいっと顔をそらす。
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