最悪な翌日

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 こうして平穏に終わったと思ったものの、そううまくはいかなかった。  ううん、どちらかというと、うまくいきすぎたというか、心配してたのと逆になったっていうか……。  この数日後、なんと、田代さんは初めての地上波テレビ出演を果たした。  ほかの有名モデルの密着番組にモデル仲間として出た結果、撮影前の穏やかさと撮影中のかっこよさ、そして撮影後の気さくさから、瞬く間にファンを獲得してしまったのだ。  うん、田代さんのギャップのすごさは私も知っている。よくこれを生で浴びて生き延びたなって自分でも思う。番組は当然録画したし、毎日繰り返し見てる。  番組放送後から田代さんのSNSは数万単位でフォロワーが増えて、チャンネルも大盛況。一躍、注目モデルになってしまった。  事務所側もその想定外の盛り上がりから、急遽サイン会の午前枠を作って参加人数を増やすも、サーバー瞬殺の大ラッシュ。  私の持っているチケットも、一気にプレミアものになってしまった。 「まさかこんなことになるなんてね」 「うちの弟もびっくりしてた。田代さんとコラボした回、再生数跳ね上がってるんだって」  先輩たちとはあの日以降も仲良くさせてもらっている。  私が田代さんのファンだったことは翔哉君がバラしちゃったけど、どうりでガチガチだったわけだって恥ずかしい納得をされた。 「サイン会、せっかくだし気合い入れてかなきゃね」 「うち来てくれたらメイクするから。会場まであいつに送らせるし。  女の子外泊させた罰」  サイン会。サイン会、どうしよう。  先輩たちが協力的で嬉しいけれど、ちょっと頭が痛い問題だ。 『明日、何時に迎えに行けばいい?』  送迎役をお願いすることもあって、翔哉君と連絡先を交換した。  翔哉君は橋本先輩の弟さんだし、配信者だけど芸能人じゃないから配慮しなくていいって先輩にも言われたけれど。問題は、翔哉君が田代さんの友達ということだ。  つまり、私のことは翔哉君から筒抜けになっているわけで。 『タッシーが明日楽しみにしてるって!』 『最後尾になるように手配するから安心してねって』 『で、終わったら三人でご飯食べよ。てか、ねーちゃんにご飯奢れって脅されてる(笑)』  に、逃げ場がない!  私の逃げ腰具合はしっかりと覚えられていて、田代さん側がいろいろと配慮してくれている。  でも、この配慮もなんか問題ありそうっていうか、特別感があるっていうか……バレたら処刑もので! ああもう! 全然心が落ち着かない!  推しに会ってないのに帰りたい!
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