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花火が終わって、ほろ酔い気分で部屋へと戻る。
花火見たあとって、なんで光が全部花火みたいに見えるんだろう。光の余韻で、なんだかふわふわしちゃう。
「あー、だめだ。全滅かも」
翔哉君がスマホを見て唸っている。
私が見ているのに気がつくと、眉毛をへにょっと下げた。
「ごめーん、今探してんだけど、タクシーどれも満室……完敗? 全滅でさあ」
サイトでタクシーを探してくれていたらしい。
「うう、やっぱこういうイベントごとのときってタクシー死ぬよなあ」
「車でも来れないし電車もあれだしな」
「交通規制とかもありそうですよね……」
電車でギュウギュウか、タクシーで缶詰か。
どっちにしろ、帰りは残念なことになりそうだ。
「よかったら、ここでご飯食べてく? 翔哉もいるし、元から宅配頼むつもりでいたから」
この提案には驚かなかった。
ご飯時だし、すぐに帰れそうにないし、休日イベント日の飲食店なんてどこも混み合ってるだろう。
同じ立場なら私だってそう聞く。
「お言葉に甘えさせていただいてもいいですか?」
「もちろん。食べたいものある?」
「ピザ!」
「お前には聞いてないぞー?」
いい笑顔で田代さんが翔哉君の頭を押さえる。
酔ってきたのか、二人ともすっかり気を抜いた態度になっていて、私生活を覗き見してるみたいでドキドキする。
――そのあとのことは、あまり記憶に残っていない。
酔ったら記憶をなくすタイプだった、とかそういうのじゃなくて、ふわふわした気持ちで楽しく過ごしただけなので、これといって特筆することがなかったのだ。
ただ、起きたら知らないベッドの上だった、というだけで。
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