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あー、びっくりした。
そうだよね、客間は私が使ってたんだからここしかないよね、悪いことしちゃった。
よし、今のうちにカーテン開けていかがわしい雰囲気消そ!
勢いよくカーテンを開ければ、夏の日差しが目を焼いた。
健全健全、私がここにいなければすごく健全な朝!
次はなにすればいいかな。
翔哉君は顔洗いに行ってるし、田代さんはまだ起きてきていない。
翔哉君が戻ってきたら私も顔を洗いに……あれ? 私、メイクちゃんと落としてたっけ……!?
わたわたとスマホで顔を確認する。
昨日顔を洗った記憶は全然なかったけれど、メイクは落ちている。すっぴんだ。
んー、すっぴんかあ……! よかったけどよくないなあ……!
化粧ポーチも直し用のしか入れてないし、これじゃポイントメイクしかできない。アイブロウとアイシャドウがないのは大きな痛手だ。
こんなことなら、昨日大枚を叩いてでもフルセットを買っておくべきだったんだ。
せっかく買った口紅も、ほかができないんじゃ意味ないし。
うんうんと唸っているあいだに、翔哉君が戻ってきた。
顔を洗ったらさっぱりしたようで、さっきまでのねぼけまなこもぱっちりと開いている。
「あー、目ぇ覚めた。外どんな感じ?」
「快晴です」
私の返事を聞いてから翔哉君が窓に目を向ける。
明かりを付けたままだったのを思い出して、慌てて消した。
「うわ、ほんとだ。昨日もだったけど暑そー」
スリッパの音を立てながら翔哉君が冷蔵庫を開ける。
「あの、私も顔洗ってきますね」
「はーい。あ、タオルは上の棚にあるんで」
「わかりました、ありがとうございます」
田代さんが来る前にと、手早く洗顔を終わらせてリビングに戻る。
朝食を用意してるみたいで、トースターの音がした。
「小笠原さんパン何枚食べます?」
「え」
「朝食べない派?」
尋ねながらも翔哉君は皿をふたつ出した。
「わ、私もなにか」
「いいよ、チーズトーストだから。塗って乗せるだけだし」
それならサラダでも、と言おうとして、推しの家の冷蔵庫だったことを思い出す。
推しでなくても、家人の許可なくあれこれ使うのは好ましくない。
「トースター二枚しか入らないんだった。とりあえず一枚ね」
ペリペリとフィルムを剥がして、マヨネーズを塗ったパンにチーズを乗せる。
それをトースターに入れて、ぐびりとリンゴジュースを飲んだ。昨日の道の駅ジュースだ。昨日開けた瓶は昨日のうちに飲み切ったはずだから、夜のうちに新しいのをどちらかが冷やしておいたらしい。
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