オシャレにこだわる理由

3/4
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
 先輩たちが目を付けていたイタリアンのお店だけあって、パスタはとても美味しかった。  料理の盛り付けもきれいだし、店内は観葉植物が飾られていて落ち着くし、目の前には美女が二人。どこを見ても目の保養だ。 「そうだ、土曜日何時にする?」  食後のコーヒーが運ばれてきたところで、結城先輩が橋本先輩に問いかける。 「何時オープン? 十時? 十時につく時間でいいんじゃない。駅から何分だっけ」 「電車混むよたぶん。早めに行っとかない?」 「そっか。車出せればよかったんだけどね」  二人でどこかに出掛けるらしい。二人とも同期だって言ってたし、普段から一緒に遊んだりしているんだろう。  パッと浮かんだ構図はアフタヌーンティーを嗜む二人。ああでも、美術館で芸術鑑賞とかも似合う。  それともアグレッシブにアクティビティ? もう暑いし、水上アクティビティとかもできるよね。私は水着になれる体型してないけど二人は余裕だろうし……。 「どこに行かれるんですか?」 「ショッピングモール。ここわかる?」  覗き込んで首をひねる。  アクセス方法の画面に名前は出ているけれど、地名しかわからない。駅を通り過ぎることはあるけれど、セレブが集う区だし降りたことすらない。 「私たちもこういうとこ普段は行かないんだけど、夕方まで暇でさ。せっかくだから行ってみようかってなって」 「ああ、わかります。一人じゃ行けないところでも、友達と一緒だと行きやすいですよね」  ブランド品のお店でよくやるやつだ。  一人だと、入ったからにはなにか買わなくちゃとか、店員さんにどう思われているかとかが気になって生きた心地がしないけれど、友達と一緒ならプレッシャーも感じなくなる。  ビビりな私は、行ったことないお店だと全部そうなっちゃうんだけど。  せっかくなのでそのモールを検索してみる。  ハイブランドばかりが並び立つかと思いきや、本屋さんや雑貨屋さんもあって、私なんかでも少しくらいなら足を踏み入れられそうな雰囲気がある。  とはいっても、外観写真に写るのは高層ビルで、やっぱりお呼びでない感じはした。 「あっ、北海道にある生クリーム専門店もあるんですね!」 「そうなの?」 「はい! あと京都の京料理が楽しめるお店も」 「へえ、どれどれ」 「あ-! 私の好きなケーキ屋ある! え、食べよ食べよ」  二人がキャッキャッし始めたところで、ふと我に返る。  ショッピングモールで真っ先に飲食店調べてる私って、もしかして論外なのでは?  ……だ、だって! ブランド店とか見たって買えないから意味ないし! 私が入れるところって高くない飲食店くらいだったから!  なんて言い繕えるはずもないので、慌てて違うお店も調べ始める。 「あと、えと、本屋さんもいいですよね。海外の絵本なんかあるそうですよー。  それに、日本初上陸のブランドとか、限定商品もたくさん」 「へえー」  情報量を増やして最初の失敗を押し流そうとする。それが功を奏して、なんとか話題を逸らすことに成功した。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!