想定外のショッピング

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 基本、デパートや商業施設の一階は高級ブランド店が多い。  だれもが名前を知っているバッグとかコスメとか。だから、ラフな恰好の弟さんは、これでもかというほどに浮いていた。 「俺ヤバくない? 一流企業のお姉さんに養ってもらってるヒモ大学生みがない?」  そうはいうものの、人数が多いからか背筋は伸びている。  顔がいいので、よけいその例えに説得力があった。 「そう思うなら、そのへんでジャケットでも買えば?  言っとくけど、ヤバいのはあんたがそんな恰好で来たからだからね」 「このかっこでジャケット買いに行けって? 服買う服がないやつになるよ」 「でも、その恰好でずっといるの? 知り合いの人ってそういうの気にしない感じ?」 「……あ」  弟さんが立ち止まり、顔に手を当てる。その表情は悲痛だった。 「忘れてた。たぶん、帰られますね……」 「厳しいですね」 「本人がモデルやってるんで……説教不可避かも」 「終わったな」 「モデルさんの知り合いなんてすごいですね」  いろいろな人とコラボしていたし、交友関係は広そうだ。  もしかしたら、知っている芸能人なんかもいたりするのかもしれない。 「どうする? 駐車場で半日過ごす?」 「その選択肢はないよ。んー、やっぱ買うしかないかー」  ヌググと唸る弟さん。ここで買うとなると、それなりのお値段になってしまうから気持ちはわかる。 「桜さんと小笠原さんには悪いんですけど、俺の買い物付き合ってもらえません?  一人で入れる店じゃないんで」 「いいよ。せっかくだから選んであげよっか」 「いいの?」 「待ってるだけなのも暇だし。とびっきり高いの選んであげるねっ」  茶目っ気たっぷりのウインクとともに、怖ろしいことをおっしゃる結城先輩。便乗するように橋本先輩が手を叩いた。 「そうね、あんたも一着くらいはいいジャケット持っとくべきでしょ。さーて、一番高いお店はどこかな-?」 「ちょ、姉ちゃん!? 俺、シャツ買えればいいんだけど!?」 「えー、こんなブランドショップ立ち並ぶところでそんなこと言うのー?  駐車代浮かせるために一肌脱ぎなさい」 「それが目的か! 待って待って、五万越える買い物は無理だって!」 「あ、あそこよくない? 見るからによさそう」 「値段がね!?」  うーん、先輩たち容赦がない。  ずるずる引きずられる弟さんに同情しつつも、私は無言で後ろを追った。
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