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その後、ランチに屋台で買ったホットドックとポテト、飲み物を手に、近くの海岸まで来た。
ここは椰子の木が茂る、ハワイ、オアフ島のワイキキビーチだという。
言われてみれば周囲を散歩するのは外国人観光客と日本人が半々。砂浜はないけれど海岸沿いに作られた公園の芝生に座れば、海が視線の先に広がる。
「ここ、気持ちいいね」
木陰の下になるそこは、初夏の涼やかな潮風が心地よかった。
「ん。ふぐっ」
ホットドックに齧り付いたまま、千尋は返事をする。『そうだろ?』と、目が語っていた。
思わず吹き出すと、千尋の眉間にムッとシワが寄る。軽く握られた拳がコツリと頭に当てられた。
「だって。千尋、フガフガ言うから」
頭を押さえて見せれば、ホットドックを持っていない方の手が伸びてきて、俺の肩を抱くように引き寄せた。
そのまま顔が近づいたかと思うと、口の端をペロリと舌が舐めていく。
「──!?」
「ケチャップ、ついてた」
イヤイヤ。それは口で言うか、せめて指で拭き取ってくれれば──。
「拓人、顔真っ赤」
してやったりと千尋が笑んでみせた。
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