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「兄さん!!」
声がして、聞き慣れた声がして、俺は彼から離れる。
なんでもう、来ちゃうんだよ。早いよ、2人とも…
「っ、っ…あんた、誰だよ!」
秀太が俺の元に駆け寄って俺をぐっと抱きあげ、抱きしめる。
「……、そうゆーことですか。珠城さん、普通じゃなくても俺はいいと思いますよ。」
何か納得した様にそう言って彼はニコッと笑った。
結局、俺はぐず、と鼻水を啜って失敗に終わった2人から離れる計画を悔やむ様にぎゅっと秀太の背中の服を握った。
理由が本当にそれで合ってるかはわからない。
家に帰ると金の無駄だったと2人が話すのを聞きながら、部屋に戻される。
「兄さん、ねえ、なんで逃げるの?なんで?ねえなんで…」
俺の両腕をぎゅ、と握ってそう言う。
「……、」
口がはく、と動く。
「兄さんは俺たちが嫌いなの?」
「き、嫌いじゃない!」
だって、違う。お前らが普通になるためじゃない、俺のためだ。
恋なんてそんなことしたら、終わりが来て、終わりが来たら離れちゃう。
それを2人に伝えたら2人はなんで思う?
「兄さん、ねえ…思ってることがあるなら言って?」
「……………、っ、…っ」
「何言われたって引かないし、ずっと好きなままだよ」
そう言って後ろからぎゅ、と俺を抱きしめる秀太。
「…お、れ、俺は…、」
「うん」
ほんとに、言っていい?
「……、ほんとは、好きだ。」
唇が震える。
「ほんとは好きで、大好きで、でも恋人なんてなったら終わりが来るじゃないか、だから、俺は、お前らの兄ちゃんでい続ければ…っ、」
じわじわ涙が溢れて、泣きたくなんてないのに悲しくなる。
「兄さん、俺たち兄さんから離れるなんて絶対有り得ないよ」
「……うそ」
「嘘じゃないよ」
瑠衣は俺のおでこにおでこをくっつける。
「兄さんのこともう失いたくない。好き、大好きなんだ…」
そう言う瑠衣の言葉に嘘がない事がよくわかる。
「…っ、う…ぇ」
今日はずっと涙が出る。俺はその涙がいつの間にか暖かくなってる事に気がつかなかった。
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