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「何が買いたいの?」
「森鴎外の舞姫」
…………まじ?ちょ、ちょっと小学5年生にしては早すぎないか?エロ小説ですよあんなの。
「……、ま、漫画とか…どう?」
俺がそう進めれば、瑠衣は少し俺を見てにっこり笑顔になる。
「…冗談だよー兄さん。そんな難しいの読めないよ」
「だ、だよね!び、びっくりした〜…」
そう言いながら俺が毎月あげてる1000円のお小遣いで瑠衣は小難しい文庫本を買っている事を俺はまだ知らない。
「たまちゃん!これ、これ買ってー!」
急になんだと思えば秀太が少女漫画を手にして持って来た。
別に良いけど…なんで少女漫画?
「内容どんなのかわかってる?」
「うん!女の子と男の子が恋する!」
わかってるならよし。
「よし、買ってやる。ちゃんと恋愛マスターしろよ」
「マスターする!」
それで結局瑠衣が取ってきたのは歴史の漫画だった。
……最近の小5ってみんなこうなの…?
会計を済ませて、本を持ちたがる秀太に袋を渡した。俺たちはスーパーへ行き食材調達をした。
秀太がどさくさに紛れてお菓子を大量にカゴに詰めていたので1つに絞れと言って俺達は買い物を済ませた。
そのあと銀行に行って今月のバイト代を確認する。……8万円かぁ…
俺は通帳を閉じて鞄に仕舞う。
お金はあるにしろ、いつ何があるかわからない。だから自分でもしっかり稼がなくてはいけない。
「たまちゃん!抱っこ!」
「おー俺の肩外れるから無理だ」
「なんで!!」
子供のなんでが1番困ります。
「兄さん、俺半分持つよ」
瑠衣がそう言ってくれたから俺は軽い方を瑠衣に渡す。
すると急に秀太が立ち止まる。
「「?」」
「どうした秀太。暑い?」
俺と瑠衣は目を合わせて?を浮かべた後、俺は秀太の前にしゃがんだ。
「お、お、俺も。俺もたまちゃんの袋持つ!!」
「え」
いやこれはちょっと重いかも…
「秀太は本持ってくれてるだろ?」
「……、」
秀太はぎゅっと本の袋を抱えると、じわっと目に涙を溜めてびぇえええっと泣き始める。
「わ、わ。どうしたの秀太。」
俺は空いてる片手で秀太を抱っこする。ううん、小3で普通より小柄と言えどやっぱり重たい。
ぎゅうっと俺の服を握って鼻水と涙を擦り付ける。瑠衣に目配せして俺たちは家に帰った。
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