待ち合わせはノジコで

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「妻には、しつこくせずに放っておきなさいよってよく言われるんだ」 「しつこいのはやだね」  言い過ぎたことを反省したばかりで、また軽口を言う。思ったことはすぐに言いたい性分らしい。 「放っておくっていうか見守るってことじゃないかと」 「ああ……。そんなニュアンスだったかも」  森山は口をティッシュで拭い、ペットボトルのお茶を一口飲んだ。 「早っ! もうクレープ食べたの」  また泉のスマートフォンが鳴った。 「ひかりさんは彼氏いるの?」 「えっ、私?」 「色々、経験者?」 「コラ! 変な言い方しない!」  森山が顔を真っ赤にして怒った。 「ごめんなさい」  そう言う泉の顔は笑っている。 「過去に付き合った人はいるけど、今はいないよ」 「そうなんだ。付き合うってどんな感じ?」 「どんなって、普通だよ。一緒に出かけてご飯食べたり、たまに喧嘩したり」 「そっか、やっぱり喧嘩するんだ」 「例えばよ。いつも喧嘩してるわけじゃないし」  泉の考え込む表情を見ると、電話の相手との関係に悩んでいるのかもしれない。 「そういうの嫌なんだよね」 「えっ、何?」 「意見が合わなくて、もめるの」 
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