18人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「妻には、しつこくせずに放っておきなさいよってよく言われるんだ」
「しつこいのはやだね」
言い過ぎたことを反省したばかりで、また軽口を言う。思ったことはすぐに言いたい性分らしい。
「放っておくっていうか見守るってことじゃないかと」
「ああ……。そんなニュアンスだったかも」
森山は口をティッシュで拭い、ペットボトルのお茶を一口飲んだ。
「早っ! もうクレープ食べたの」
また泉のスマートフォンが鳴った。
「ひかりさんは彼氏いるの?」
「えっ、私?」
「色々、経験者?」
「コラ! 変な言い方しない!」
森山が顔を真っ赤にして怒った。
「ごめんなさい」
そう言う泉の顔は笑っている。
「過去に付き合った人はいるけど、今はいないよ」
「そうなんだ。付き合うってどんな感じ?」
「どんなって、普通だよ。一緒に出かけてご飯食べたり、たまに喧嘩したり」
「そっか、やっぱり喧嘩するんだ」
「例えばよ。いつも喧嘩してるわけじゃないし」
泉の考え込む表情を見ると、電話の相手との関係に悩んでいるのかもしれない。
「そういうの嫌なんだよね」
「えっ、何?」
「意見が合わなくて、もめるの」
最初のコメントを投稿しよう!