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「お姉さん、お仕事は? サボり?」
「え?」
「お姉さんのこと、前にも見かけたことあって何となく気になってたの。でも、答えたくなければいいです」
少女はかき氷をしゃくしゃくとスプーンで突いている。私も誰かと話をしたい気分だったので、少女の方を向く。
「いいよ。私、ここのソフトクリーム好きでよく来るの。今日は体調不良っていうか生理痛が酷くって早退して来たの。うちの会社ってさ、暑がりの男性が多くって、冷房が23℃設定にされるのよ。エアコンが古くて効きが悪いせいでもあるんだけど」
つい、愚痴の様になってしまった。
「うわ、最悪。風邪ひきそう」
少女がぶるりと肩を振るわせた。
「だよね。だからカーディガン手放せないのよ」
せめての抵抗でこっそり温度を上げるが、気づかれてまた下げられる。
「暑がりのおじさん達がどんどん薄着になるのを見るのも嫌だから我慢してる」
会社の先輩がひとり野球拳と揶揄していた。
「えー、嫌だ。絶対無理」
少女が就職する頃には、社長がタンクトップ一枚でうろうろする会社が絶滅していることを祈る。
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