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「あの、今探している魔物は、私でも倒せるのでしょうか?」
「さあ」
「まだ分からない、ということですか?」
「お手並み拝見ですよ。吉川さんの霊験で倒すのではありませんから、今までと勝手が違うかもしれません」
「ううぅ……出来るかな……」
「大丈夫ですよ。祓う時は私が指示しますから、今は心配しないでください」
桜花の口元に笑みが幽かに浮かんでいる。
その余裕が、道行は羨ましい。
守人であるこの人にとって、魔を倒すなんて普通なのだろうな。
俺は毎日魔物を見るわけではないから、未だに憑き物落としは緊張してしまう。
「吉川さん、大丈夫ですからね」
「あ、はい! 頑張ります! えっと、魔物を見つけるコツはありますか?」
女性の顔をじっと見つめていた恥ずかしさで、道行は質問を早口で付け加えた。
「方法は様々ですが、今回は私が持っている式神が反応を示す場所に向かうだけですね」
桜花の右手の人差し指と中指には、人型に切り抜かれた紙が挟まれている。
街へ行く前に桜花が準備したものだ。
「でも、どうして紙で魔物の居場所が分かるのですか?」
「術をかけて、ある妖魔が近いと動き出し、そこへ向かうようにしました」
「じゃあ、動いてないから、まだ――」
道行が言いかけた、その時である。
おや、と言った桜花が右手に視線を向けた。
見ると、指が動いてないのに紙人形が小刻みに揺れている。
二人が歩を進めると、桜花の指から抜け出したがっているように、式神の揺れは徐々に大きくなっていった。
「これは近いですね」
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