人事を尽くして

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「久遠先生、俺は霊験者として何をすべきでしょうか?」 「健康でいなさい。災いに立ち向かうまでに力を蓄えることが必要だからね」  この答えに満足はしなかった。  山に行って、清水秋世(あきよ)に問うた時もあった。  その日家に戻ると、久遠が仰天した。 「どうしたんだい、道行⁉ 泥だらけじゃないか! 何をしていたんだ⁉」 「霊験者に必要なものについて、清水さんと相談していました」  後日、秋世は久遠に叱られた。 「全く君という人は! 道行が大怪我したら、どうするつもりだい?」 「俺だって予想外ですよ。『体力はあっても損は無い』って助言したらアイツ、山の中走り回ったんですから」  もう一人の霊験者である井村(いむら)恵子(けいこ)にも質問した。 「井村さんは、霊験を何に使っていますか?」 「子守りの仕事で使うよ。綺麗な幻は喜ばれるからね」 「井村さんの帰る場所で起こる災いは、何だと思いますか?」 「分かんないなぁ」  結局災いが何かも分からず、霊験の正体も判明せず、漠然とした不安が道行の中で(つの)るばかりであった。
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