6人が本棚に入れています
本棚に追加
その時、赤子が大声で泣き出した。
「目を覚ましました。診たところ異常は有りませんね」
両親が安心して涙を流す中、道行は自分が見た一部始終を久遠に耳打ちした。
そして、久遠が診ていた時には、すっかり闇が無くなっていたことも伝えた。
久遠は診察料をもらわずに親子を帰した。
後日、道行が街を歩いていると、黒い煙を背負った老人が立ち止まっているのを見つけて、駆け寄った。
「すみません。大丈夫ですか?」
「いえ、ちょっと休んでいるだけでして……あれ? ああ、もう平気です」
憑いていた闇が消えた老人を見送って、道行は確信した。
俺は憑き物を落とせる。きっと、俺が立ち向かう災いは憑き物退治だ。
最初のコメントを投稿しよう!