人事を尽くして

7/10
前へ
/165ページ
次へ
「今日は式神の使い方を教えてくださるのですよね?」 「ええ、でもお疲れでしたら、お休みしても良いですよ。それを聞きたくて来ました」 「ああ、疲れは取れています! 嘘じゃないですから!」 「それなら安心しました。今日学ぶ式神での遣り取りは、休む時の連絡にも便利ですよ」  そうか、雨宮さんが式神で連絡しても、式神が使えない俺は返事が出来ない。  こうして訪ねてきたのも、気遣いがあったのか。 「では図書館へ、このワンコと行きましょう」 「ワ……! もう、からかわないでもらえませんか!」  やはり、この方の考えは読めぬ。 「魔を祓う術を学ぶことは楽しいですか?」  桜花が、並んで歩く道行に話しかける。  仕事が無い日の二人が行くのは陰陽寮ではなく、街外れの図書館だ。 「気になっていたのです。吉川さんはいつも一生懸命なので」 「この国を守るためですから」  道行の声は誠意に満ちていた。 「私の霊験なら、怪異への対処法は災いを退(しりぞ)けるのに役立つと思います。だから、学ぶのに気合いも入りますよ」 「本当に頼もしいです。でも、好きか嫌いかで考えたことはあるのですか?」  この質問に道行は面食らい、しばし黙った。 「……術を学ぶこと自体を、好き嫌いで考えたことは無いですね」 「そうでしたか……あ、私を前にして『嫌い』とは言いづらいですよね」 「嫌いではありません! 習得出来れば嬉しいですし」 「熱心ですね。貴方は覚えが良いですよ」 「ありがとうございます」
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加