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「今日は式神の使い方を教えてくださるのですよね?」
「ええ、でもお疲れでしたら、お休みしても良いですよ。それを聞きたくて来ました」
「ああ、疲れは取れています! 嘘じゃないですから!」
「それなら安心しました。今日学ぶ式神での遣り取りは、休む時の連絡にも便利ですよ」
そうか、雨宮さんが式神で連絡しても、式神が使えない俺は返事が出来ない。
こうして訪ねてきたのも、気遣いがあったのか。
「では図書館へ、このワンコと行きましょう」
「ワ……! もう、からかわないでもらえませんか!」
やはり、この方の考えは読めぬ。
「魔を祓う術を学ぶことは楽しいですか?」
桜花が、並んで歩く道行に話しかける。
仕事が無い日の二人が行くのは陰陽寮ではなく、街外れの図書館だ。
「気になっていたのです。吉川さんはいつも一生懸命なので」
「この国を守るためですから」
道行の声は誠意に満ちていた。
「私の霊験なら、怪異への対処法は災いを退けるのに役立つと思います。だから、学ぶのに気合いも入りますよ」
「本当に頼もしいです。でも、好きか嫌いかで考えたことはあるのですか?」
この質問に道行は面食らい、しばし黙った。
「……術を学ぶこと自体を、好き嫌いで考えたことは無いですね」
「そうでしたか……あ、私を前にして『嫌い』とは言いづらいですよね」
「嫌いではありません! 習得出来れば嬉しいですし」
「熱心ですね。貴方は覚えが良いですよ」
「ありがとうございます」
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