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「先生。俺が祓い屋になるのは、やはり嫌でしたか?」
数日前の茶の間――秋世の手伝いとして、祓い屋の職に就いた道行が問うた。
久遠は道行と同じく正座で向き合ってから、「あのね」と発する。
「君が望んだ道を止めはしないよ。ただ、今までの君の仕事先とはあまりにも環境が違い過ぎて、心配になるんだ」
「では、他の質問をさせてください。どうして千代は俺より先に、守人の皆様と働けたのですか?」
道行は平静を保ちつつ、込み上げる感情を秘めて言葉を続けた。
三ツ谷千代は魔や人の痛覚を己に乗り移らせることが可能だ。その能力で守人の仕事に同行している。
しかし、陰陽寮に勤務しているのではない。必要な時に守人の方から呼ばれるのだ。
道行が陰陽寮に勤められたのは、彼が魔を祓える霊験を持っていたから。
だが、その祓い方が陰陽寮では認められないものと分かり、辞めることになった。
「千代が陰陽寮で働けないのはどうしてですか? 清水さんは守人以外の魔を祓う仕事もしていると、今まで教えてくれなかったのはなぜですか?」
少しでも答えを渋られることが耐え難く、一つの質問の答えも待たずに畳みかける。
「憑き物を落とす仕事は無いのか訊いたこともあったのに、祓い屋の仕事の存在を、どうして教えてくれなかったのですか?」
「分かった。次から次へと質問しないでくれ。今答えるから」
久遠は逸る道行を落ち着かせてから、深呼吸をする。
「千代が私たちと働けるのは、守人の誰かがいる仕事ならいいとあの子に約束してもらったからだよ。道行、君を陰陽寮で働かせたのも、雨宮さんがいるからだ」
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