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「ならば、俺が千代みたいに、陰陽寮に所属しないで働いても問題無いのでは?」
「私としては、千代も陰陽寮で働いてくれたら安心だった。でも、守人が言う霊力に、あの子のような誰かの代わりになるものは存在しないんだよ」
「千代の霊験は霊力の特徴が無いから、陰陽寮での仕事はまず無理だと」
「そうだよ。だけど、あの子も君と同じように、自分に与えられた力を仕事にしたがった」
「はい、そうでしたね」
「千代には言っていないけど、私が根負けした形なんだ。あの子の苦しみが、見るに堪えられなかった」
根負け?
俺だって同じ時に苦しんでいたぞ。
道行の心底が、ふつふつと煮えたぎる。
その時、音を立てて襖が開いた。
「先生!」
怒り狂った千代が茶の間に攻め入る。
「盗み聞きをしていたのか」
久遠が咎めるのを千代は聞かない。
「というか、先生。道ニキの霊験をよく知りもせずに『魔祓った! これ霊力!』って陰陽寮に入れて、違うって分かったらクビだポイって酷いですよ! 最初に調べるとかしてないでしょ?」
この指摘で、道行は覚める感覚がした。
久遠の目の前で、道行が霊験を使用したことはなかった。
掴みかかる勢いで捲し立ててくる千代に、久遠はたじろぎつつも落ち着いて言葉を返す。
「それは何度謝っても足りないが、一人でも魔を祓う助けがほしかった。雨宮さんの補佐なら実践が少ない」
「私は役に立ちたいんですよ!」
千代が怒鳴る。
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