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「魔と戦う実践でも魔に憑かれて泣き喚く仕事でも、自分が出来るなら貢献したいのに、守ってもらう手間なんて増やしたかねーんです! 私と道ニキはもう大人なんだよ!」
布の下で久遠の口は動いたのだろう。それよりも千代の言葉が早かったが。
「私らは人間らしい生活をしようとしました。アンタの望む通りね! 毒親ヤロウ!」
道行の不信感は膨らむだけだった。
先生は優しい。傷付けないような優しさが今は腹立たしい。
ごまかしじゃないか。中途半端な善意だ。
不信は破裂して言葉に変わった。
「どうして教えてくれなかったのですか! 千代にも、俺にも、不誠実ではないですか!」
道行は慟哭した。
怒りと悲しみが綯い交ぜになった形相を、千代と久遠は見下ろしていた。
「うぅぅぅ……わぁあぁあぁぁぁーーーー!」
千代は泣き叫んで、茶の間から出て行った。
道行も、久遠も、次の言葉が消え失せた。
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