うみのかみ

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「今は見守り、祈りましょう」  前方に踏み出した道行は、微動だにしない桜花に腕を掴まれた。  道行は泣き出しそうな顔で、表情の失せた桜花に叫んだ。 「俺に霊験を使わせてください! 近くなら、あれを祓えるんです!」  少し前の道行なら、すぐに腕を振り払って海に飛び込んだ。 「霊験を使うのは止めるように頼みました」  桜花が冷淡に返した通りだ。約束を(たが)えたくはない。  でも、このままでは―― 「あのままじゃ、先生が死んでしまいます!」 「ご心配はもっともです。先生は死と隣り合わせの状況にあります」  久遠の腕の力が、かすかに緩んだ。  待っていたかのように、魔は久遠の全身を包もうとした。  道行の目が絶望で見開かれた時、久遠の背後に青い光が見えた。
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