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久遠の頭の位置を優に越す青色は、巨大な魚の尾びれだった。
「な……何だ、あれは?」
道行の思考を後に置いて、久遠を取り囲んだ魔が、突風に攫われた煙のように消滅した。
「あ……消えた! 助かった?」
「はい。危ないところでしたね」
結界の中の曇天から、光の筋が降りてきた。
日の光を反射した青い鱗は輝きを増して、煌めく。
「ねえ、吉川さん」
張りつめていた感情から解放された道行に、笑顔が戻った桜花は言う。
「私は未熟なのです。魔を未然に食い止めた経験は、先生や清水さんより少ないですから」
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