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「雨宮さん。この中の魔物とあの子は、関わりがあるのですか?」
「そう言えますね。その魔が彼を追っているのを利用して、捜してもらいます」
三ツ谷さん、と桜花は千代に呼びかけた。
「また乗り移らせてもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」
「大丈夫です。何でも手伝います」
桜花と道行は、来た道を千代と共に早足で戻っている。
落ち着きを保った表情の桜花以外は、反応を示さない札が心配で仕方ない。
「道ニキ、それ動いた?」
「いや……ん?」
札が道行の手の中で震え出していた。
「道ニキ、早く!」
「よし、行け!」
道行は札に先導させるべく、右手を開いた。
ビュン!
札は目にも止まらぬ速さで真っ直ぐ前へ飛んで行き、見えなくなった。
道行と千代はポカンと口を開け、三人はその場で固まった。
「吉川さん。先に案内するよう命じないと、ただ追いかけるだけです」
桜花は非難する素振りも無く、冷静である。
「このっ……バッカヤロウ……!」
千代は腹立ちを抑えられずに、口から道行への暴言が漏れた。
「でも、この先にいることは分かったので、とりあえず進みましょう」
「はい、ごめんなさい!」
桜花の慰めに、道行は頭を下げるしかない。
三人は札の行き先を見つけようと進む。
そうしている内に、泣き声が耳に飛び込んだ。
なだめるような声と怒鳴り声もする。
「坊ちゃん! 落ち着け、な? 恵子さんと一緒に守人さんトコ行きや?」
「おい、大久保! 早くこのクソガキを追い出せ!」
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