全速力の君と

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今日で、この教室も見おさめ。久瀬 奏風(くぜ かなた)は、窓の外をボーっと眺め、ちらほらと下級生達が帰る姿を見ていた。2日前に卒業式が終わり、もうここには来ることはないと思っていたけど、月城 一晴(つきしろ いっせい)に呼び出された。どうせ、大学に合格したことを報告しに来なきゃいけなかったから、別にいいけど…… でも、もうしばらく会うことはないと思っていたから心が少し騒つく。 「奏風、悪い。遅くなった」 もう何年も聞いている声なのに、まだ僕の胸は高鳴ってしまう。だけど、そんな様子を悟られないように、いつものように仮面を被って、振り向く。 「なに?わざわざ、こんなとこ呼び出して……」 2人きりになるのも、ちゃんと一晴の顔を見て話すのも本当に久しぶりで、ソワソワ落ち着かない。最後に2人で話したときにちょっと険悪な雰囲気になっていたから、どう返していいのかわからなくて、ぶっきらぼうになってしまう。 チラッと覗き見た一晴は、妙に真面目な顔をしている。なかなか声を発しない一晴にヤキモキしながら、激しく鳴る鼓動がバレやしないかと、今まで必死に被ってきた仮面が剥がれてしまわないかと、この間が耐えられなくて軽口を叩く。 「何?卒業式も終わってこんなとこに呼び出すなんて、もしかして愛の告白とか?なーんて……」 絶対にあり得ないことを言って、そんな奏風を笑って突っ込んで欲しいのに、話なんて聞いてないかのように遮って、一晴の言葉が降ってきた。それもあらぬ方へ…… 「奏風、お前さ、俺のこと……好きだったりする?」
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