20.少しずつで構わねぇから【Side:長谷川 将継】

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20.少しずつで構わねぇから【Side:長谷川 将継】

 目が覚めると同時。  身体の片側一部にどこか温かくて心地よい重みを感じた私は、「おや?」と思った。  そろそろと気怠い身体を起こして、いつもの癖。  布団脇に置かれた眼鏡を手に取る。  実際のところ、私はさして視力が悪いわけではないから眼鏡越しでなくとも近くのものは難なく確認できる。  だが生まれつき色素が薄く、紫外線に弱い瞳を保護するために掛けているに過ぎない眼鏡は、ないと落ち着かない程度には、いつの間にか身体の一部と化していた。  その眼鏡越しに視線を落とせば、疲れてしまったんだろうか。  深月(みづき)が私にもたれ掛かる格好で眠ってしまっていた。 (マジか……)  最初に思ったのはそれで。だけどその驚きは、すぐさま(可愛いな……)というふんわりとした想いに取って代わられていた。  閉ざされた目の縁を飾るまつ毛が、世間一般の人々よりもやや長めに見えるのも。  スッと通った鼻梁(びりょう)が絶妙なバランスなのも。  薄く開いた唇が愛らしい桜色なのも。  年の割に幼く見える深月のビスクドールのような色白の薄い肌は、下手に触れればすぐに傷ついてしまいそうに繊細(やわ)に見えた。  (からす)()羽色(ばいろ)というのがあるが、深月のサラサラの髪は正にそれで。  光の当たり方如何(いかん)で、どことなく紺碧(こんぺき)掛かって感じられるそれが、光を受けて虹色に(きら)めいている。 (色素が薄い私の髪とは大違いだ)  ともすると日本人離れして見える、どこか色味の抜けた感のある栗毛色の瞳と髪の色は、幼い頃から軽くコンプレックスなのだけれど。  咲江(さきえ)は初見の時からそこが好きだと言ってくれた。
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