20.少しずつで構わねぇから【Side:長谷川 将継】

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 どうやら深月(みづき)。  照れたり慌てたりしながらも、例の約束を反故(ほご)にする気はないらしい。 (ホント、この子は。――こんなガードが甘くて大丈夫なのか?)  私は先ほど、嫉妬心にかられて深月と最後までしたいと焦った結果、彼を(おび)えさせてしまった。そのくせ私のモノを何の躊躇(ためら)いもなく(くわ)えてみせた深月は、どこか別人のようで。  「あーん」ごときで照れる彼と比較してみても、深月にはこと性的なことに関して、どことなくアンバランスな危うさがあると思ってしまった。 (そういうところがなぁ。本人にその気はなくても見てる人間(がわ)嗜虐心(しぎゃくしん)を煽り兼ねねぇんだわ。……下手したら何気なく発した言葉や態度が、あの子の預かり知らんところで誰かの嫉妬心をくすぐったりしてそうで(こえ)ぇーんだよなぁ)  実際私がいい例ではないか。 (結構深月のこと、気に入ってるってオーラを出してたつもりなんだがなぁ。そんな人間に、他に好きな相手がいるとか言っときながら身を任せちまうって……。正直(ぶっちゃけ)危なすぎんだろ)  私がレイプ願望のある人間だったら泣き(わめ)いて震える深月をギュッと押さえつけて、最後までヤっちまってた可能性だって否定は出来ないのだ。  なのに――。  深月にはそのつもりはなくても、この防御力の低さは、彼の恋愛偏差値の低さを如実に物語っているように思えて。  それゆえに危なっかしく思えて仕方がないのだ。 (なぁ深月よ。――今だってこんなところで寝ちまって……。私に食われるかも?とか思わなかったわけ? それとも熱で弱ってる私は……牙も爪も抜け落ちてるとでも思ってたのか?)  ――だとしたら、認識が甘すぎる。
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