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湯気のくゆるレンゲを深月が私の目の前でふぅふぅして冷ましてくれている。
口をちょんと突き出した様が可愛くてたまらないと目を細めている私は、はたから見たら相当危ないヤツだろう。
当の深月が、粥に夢中で気付かないのが幸いだ。
「あ、あの……多分大丈夫だと思うんですけど……」
私の前に玉子粥の乗ったさじが差し向けられて、私はそれに顔を近付けて口を開こうとして、思わず「あ」とつぶやいていた。
ほわりほわりと立ちのぼる湯気で、眼鏡が曇ってしまったのだ。
私は眼鏡を外して枕元に置くと、深月をじっと見つめる。
「なぁ悪いんだけどさ……。ホントに冷めてるかどうか、確認してみてくんね?」
眼鏡が曇っちまったし不安なんだ、と……そんなニュアンスを込めて深月を見詰めたら、深月がオロオロしながら「……え、あのっ。でも、どうしたらいいのか……僕、分からなくて」と、つぶやいて。
「んー。そうだな。深月がほんの少しだけさじに口をつけて確認してくれたらいいんじゃねぇかな」
そう言ったと同時。
(それが、間接キスになるとか思って意識してくれたら最高だよな)
なんて思っている私の目論見が、見事成功しているんじゃないかと思わずにはいられないほど、深月が真っ赤な顔をして私を見詰めてきたのが可愛くてたまらなくて。
――なぁ深月。少しずつで構わねぇから。もっと私を意識してくれないか?
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