22.一度も二度も変わんねぇな?【Side:長谷川 将継】

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22.一度も二度も変わんねぇな?【Side:長谷川 将継】

(喉……乾いたな……)  夜中――。  渇感(かつかん)にふと目を覚まして、いつもの癖。  半身を起こしてゴソゴソと手探りで枕元に置いた眼鏡を掛けるなり薄闇の中。いの一番にすぐ背後――寝ている時は頭上に来ている仏壇に飾られた咲江(さきえ)の遺影に目を向けて。  咲江の笑顔に安堵(あんど)して小さくうなずいてから、ふとぐるり周囲を見回した私は、思わず声を上げそうになった。 「――っ!」  何故なら部屋の隅っこ。  私の布団から見て左手側――広縁にほど近い障子前(ばしょ)へ布団が敷かれていたからだ。  縁側を挟んでいるとはいえ窓に一番近いそこは、この部屋の中で一番外気の影響を受けやすい場所だ。  加えて昨夜、私は食事の際、深月(みづき)に頼んで障子とその先の窓を少し開けてもらっていたから……。  きっとそこから、ひんやりとした外気が漏れ入ってきているはずだ。 「深月……?」  ――だよな?  彼以外の人間が寝ているはずはないと頭では分かっていたけれど、この部屋へ自分のものとは違う布団がもう一組敷かれている光景を見て、私が真っ先に思い出したのは亡き妻・咲江のことで――。  そんなことあるはずがないと思いながらも、妙に心がざわついてしまう。  四つん這いで膝行(いざ)るようにして布団へ近付いてみれば、当たり前だがそこに寝ていたのは咲江ではなく深月だった。
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