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(もしかして……私の看病で相当疲れているんだろうか)
そもそもここで寝ようと思ったこと自体、きっとちょいちょい目を覚ましては、私の病状を確認するためだったんじゃないかと思えて――。
そこでポロリと額から半分剥がれてめくれたジェルシートに気が付いた私は、それを取り去りながらふと枕元へ置かれたゴミ箱に視線を転じた。
中には眠りに就くときにはなかったはずのジェルシートの残骸が、いくつも入っていて。
そのことに気が付くなり、私は思わず苦笑せずにはいられなかった。
(――私のことなんて放っぽって……寝てくれて構わなかったんだぞ?)
そう心の中で独り言ちながらも、深月に気遣われたことが嬉しくてたまらないと言ったら、『ホント、病気の時の将さんは呆れちゃうくらいワガママですね……』と咲江に笑われるだろうか。
(ホント、バカな子だ……)
口の端に笑みを浮かべながら、私はほんの少しだけ迷った後、自分の布団のすぐそばへぴったりくっつけるように深月の布団を配置し直した。
(ワガママついでだ。許せ)
それは深月に対する言葉なのか、それとも咲江に対する言い訳なのか。
自分でもよく分からないままにそんな謝罪をしながら仏間を後にすると、私は水を飲みに台所へ向かった。
***
「さて、どうしたものかね」
誰ともなくそうつぶやいて、「うーん」と頭を悩ませる。
外気が入ってくる場所で眠るのは寒いかも知れない。
最初は確かにそう思って純粋に部屋の真ん中まで深月の布団を移動したに過ぎなかったはずなのだけれど――。
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