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23.欲しがりな心【Side:十六夜 深月】
胸が、背中が温かくて誰かにギュッと抱きしめられている感覚に朧気に瞼を開けると、すぐに眼前に将継さんの端正な顔が迫っていて――。
「わっ!」
(何このデジャブ感……⁉)
「おはよう、深月」
今日は将継さんが先に目覚めていたらしく、僕が瞼を開けると額と額を擦り合わせるようにしながら「おはよう」の挨拶をされてしまった。
鼻先に当たる冷たい眼鏡のレンズの感触がくすぐったくて僅かに身じろいでしまったけれど、その額からはすっかり熱が引いていて。
「お、おはよう……ございます。将継さん……熱、下がったんですね……? 良かった……」
良かったけれど――。
僕は布団を部屋の端っこに敷いていたはずなのに、何故か将継さんの布団とぴったりくっついていること、そして抱きしめられている状況に戸惑う。
「深月が夜通し看病してくれたお陰だわ。でも、あんなとこに布団敷いてたら風邪ひいちまってたかもしんねぇぞ? だから温めてやってたんだけど、寒くねぇーか? あと徹夜して眠くねぇか?」
吐息が唇に触れそうなほど至近距離で囁かれたと同時、背中に回っている腕にますます力を込められて、僕は将継さんの腕の中でキュッと縮こまってしまう。
「だ、大丈夫です……。将継さんが……ギュッとしててくれたお陰で温かい、です……で、でも――」
そこで僕は自分の身に起こっている信じ難い出来事にはらはらしてしまっていて、将継さんに気付かれてはいないかと背筋に冷や汗が伝う。
「でも、何?」
「もう……ギュッとしないで……ください」
「どうして?」
ククッと笑いながら頬に唇を押し当てた将継さんは完全に僕の異変に気付いているかのように目を細めてくるから、彼のスウェットの胸元に思わずしがみつく。
「だって……僕……今……。将継さん……絶対、気付いて……ますよね? 意地悪……です」
「私は何も意地悪はしてないけど? 深月がしっかり私のそばで病気が治ってるってことだろ? 〝ここ〟、ちゃーんと朝の生理現象が起こってるもんな?」
言いながら、下肢の中心に膝頭を押し付けられて、淫らな痺れに「やっ……だ」と弱々しい声で反抗してみるけれど、それはどこまでも媚を含んだ声で――。
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