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「……彼女じゃないなら……友達か何かですか?」
やけに食い下がってくる石矢に「理由ありの子を拾ってね」と笑ったら……「俺と……一緒ですか?」と畳みかけられた。
「まぁそんな感じかな」
そこで大滝が「石矢ぁー、そろそろ現場行くぞ」と声を掛けてくれて話は一旦終わった……はずだった――。
***
時計の針が十八時半を指そうかという頃。
「さて帰るか……」
皆、今日は現場から直帰することになっていたから、私もそろそろ帰ろうかな……と伸びをした。
いつもなら平気で二〇時くらいまで残って事務仕事をこなすんだが、今日は病み上がりの身だし、何より家で深月が――腹を空かせて?――待っていてくれる。
(――約束したもんな、深月)
手にしたスマートフォンに、何の連絡も来ていないと言うことは、深月は今日も我が家に滞在してくれているはずだ。
『遅くなってすまない。今から帰るから。夕飯、なんかリクエストあるか?』
深月にそんなメッセージを入れて、コートを手に取った。
上着を羽織りながら事務所の外へ出たところでポケットへ突っ込んだ携帯がブブブッ……と震えたのでふと視線を落とすと深月からの着信で。
「ひょっとして食いてぇもんの催促?」
ククッと笑いながら応じて、セキュリティをオンにして事務所の入り口に鍵を掛けた。
そのまま深月からの返答を待っていたら『えっと……べ、別に催促ってわけじゃないんですけど……その……もし今から買い物……とか寄るんだったら……僕も一緒に行こうかなって思って。荷物も……持ちたいですし』と恐る恐ると言った調子で切り出してきた。
「そっか。荷物持ちはともかくとして……一緒に買い物出来んのは楽しそうだな。……深月、いま、家?」
何の気なしに問い掛けたら『いえ。……あの、ちょっと僕……その、ま、将継さんの職場の近くかな?ってところまで来てて……それで』とか。
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