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25.白米にぎりと愛してる【Side:十六夜 深月】
朝は将継さんに『愛してる』、『抱きたい』だなんて言われてしまって、今日は彼が仕事に出てから気持ちが宙に浮いてぼんやりしていた。
(僕は先生が〝好き〟だけれど、〝愛してる〟とまで熱烈に考えたことはなかったような気がする……。しかも抱きたいって!)
悶々としていたけれど、はたと我に返ってダラダラしている場合じゃない!と立ち上がり、将継さんの部屋からぴったりとくっついていた布団を二組抱え、天気もいいし広縁から庭に出て一組ずつ物干し竿に掛けた。
ついでに少ししか溜まっていないけれど洗濯もして一緒に干そうと思って、洗濯かごの中から洗濯機のドラムに一枚ずつ衣類を入れていったのだけれど――。
洗濯物を一枚入れる度に(愛してる、抱きたい、愛してる、抱きたい、愛してる……)と、まるで『好き、嫌い』の花びら占いのように一枚ずつカウントしていくと、なんと最後の一枚である将継さんのスウェットのズボンが『抱きたい』で終わった。
(抱きたいって! 洗濯物占いのハレンチ!)
……と、自分でもよくわからない占いをして頬を真っ赤にしながらスタートボタンを押すと、脱衣所を後にした。
洗濯を待つ間思わずスマートフォンを取り出して『好きと愛してるの違い』と検索をかけてみると出るわ出るわの検索結果。
――好きが更に強まった、慈愛が満ちている気持ちが愛しているです。
そんな検索結果を読んで、やっぱり僕は先生を〝慈愛に満ちた愛している〟と考えたことはなかったように感じた。
そして、先生への〝好き〟と将継さんへの〝好き〟は何やら意味合いが違うような違和感も覚えていて――。
(これって、どういうことなんだろう? 恋愛レベルをおにぎりに例えるとしたら、僕は塩なし海苔なし白米にぎりだ……。ちなみに恋愛のプロレベルは焼肉おにぎりなんだ……)
いや、何故僕はおにぎりのことを考えているのだろうと、ぶるりとかぶりを振りつつも、いつまでもいつまでも思索に耽っていたのだけれど、やがて洗濯機が終了のブザーを鳴らしてきたので邪念を払いつつ立ち上がった。
(僕もせめて塩むすびになりたい……)
相変わらずおにぎりのことを考えたまま、僕は洗濯物を抱えて再び庭へ向かうのであった。
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