25.白米にぎりと愛してる【Side:十六夜 深月】

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 それから掃除機をかけてお昼ご飯に将継(まさつぐ)さんのために買っていた数日分のお粥を一袋食べてリビングでウトウトしていたら、もう夕方になってしまっていた。  急いで庭へ行って洗濯物と布団を取り込むと将継さんの部屋と僕の部屋にそれぞれセッティングして。 (こ、今夜は別々に寝るよね⁉ 清く正しく健全に!)  時計を見るとまだ十六時(よじ)を過ぎたところ。  自分の家に一人で居ても寂しいと思ったことはなかったけれど、将継さんの家は一人で居るには広すぎて。 (将継さんも一人で寂しいって言ってたもんな……。気持ち、わかる気がする)  というか、僕はこんなに時間を持て余していていいのだろうか……これから少しの間将継さんの家で厄介になることになったけれど、早く次の仕事を探さなきゃ自分の家の家賃も払えなくなるんだと言うことを思い出した。  将継さんが仕事に言っている間、僕も働かなきゃな?  そんな風に考えるとスマートフォンを持ち上げて、求人情報を検索して睨めっこを始めた。 (コミュ障大歓迎! 黙りこくってください! むしろ時給アップ!って仕事あるわけないか……)  求人情報の成果のなさに溜め息をついて(いや、選ばなければ仕事はたくさんあるけれど……)ふと、将継さんが今朝買い出しをしてくると言っていたことが頭に浮かんで。  一人じゃ寂しいから彼の職場の付近まで迎えに行って荷物持ちでもしよう!と考えて、確か朝見た将継さんの作業服の胸元に『長谷川(はせがわ)建設』と刺繍されていたことを思い出す。  スマートフォンで調べるとすぐに場所を特定出来て、歩いて行ったら仕事が終わりそうな時間かな?とマウンテンパーカーを引っ掛けて合鍵を持って外に飛び出した。  道すがら、パーカーのポケットの中でスマートフォンが短く振動したので取り出してみると、将継さんから『遅くなってすまない。今から帰るから。夕飯(ゆうめし)、なんかリクエストあるか?』なんてメッセージが届いて。  僕はなんだか嬉しくなって電話など苦手でいつも母さんとすら文章でやりとりするのに、何の躊躇(ためら)いもなく将継さんに電話をかけていた。  そんな自分の変化に自身でも気付いてはいなかったけれど、彼と出会ってからこっち、僕は色々変わっていたのかもしれなかった。
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