680人が本棚に入れています
本棚に追加
/375ページ
だが、そんな大滝に、石矢はヘラリと笑うと、
「俺、服とか買うより会社のみんなでバーベキューとかがいいっす。アパートだとそういうの、無理じゃないっすか。腹も満たされるし、みんなとも仲良くなれる。俺はそういう方が嬉しいっすね。――ねぇ、社長、会社の敷地とかでやれないもんっすかね?」
と私を見詰めてきて。
「そうだな。もぉちっと暖かくなってきたらやるか」
子犬のような目で訴えられた私は、思わずそう答えていた。
***
「――まだ寒ぃーし、外でバーベキューってわけにゃいかねぇが、家ん中でホットプレート囲むのもなかなか乙なもんだろ?」
その時のことを思い出しながらそう言ってニヤリと笑って見せたら、石矢がぱぁっと瞳を輝かせた。
「俺、社長の家にお邪魔してもいいんっすか!?」
わくわく、という文字が背後に見えそうなくらい嬉し気に身を乗り出されて、私は今更だと思いながらも深月に視線を投げ掛ける。
「なぁ深月。事後承諾になっちまって悪ぃーんだが……、いいかな?」
私の言葉に深月は一瞬戸惑ったように視線を彷徨わせて。
「あ、あのっ……。いいも何も……あの家は、将継さんのお家です……。僕はただの居候ですし……その、ま、将継さんの決定に従います……」
小さな声で、だけどハッキリとそう伝えてくれた。
さっき、一緒に住まないか?と誘い掛けたと言うのに。
未だに〝居候気分〟な深月のことを恨めしく思いつつも、そういうところが深月らしいな?とも思えて。
そんな深月に、石矢が突然ガバリと抱き付くと「深月さん、有難うございます!」と満面の笑みを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!