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深月は距離感バグりまくりの石矢に気圧されて、目を白黒させて私に助けを求めてくる。
「お、おい、石矢!」
私でさえ深月に触れるのには結構な時間をかけたんだぞ?と言う言葉を、何とか飲み込みつつ、石矢を深月から無理矢理引き剥がした。
そうしながら、
「なぁ、石矢よ。深月はお前と違ってけっこう人見知りなんだ。ちったぁー距離感をわきまえろ」
小さく吐息を落としながら諌めたら、「すみません、社長。俺、つい嬉しくて。あー、けど……だったら」と私をじっと見詰めてきた。
「ん?」
その視線に首をかしげたと同時。
「有難うございます、将継さん!」
今度は私をギュッと腕の中に閉じ込めるようにしてそう言った。
「なっ。石矢、お前、今……」
私のことを将継とか呼ばなかったか?
そう問い掛けようとしたと同時。
「だって深月さんも俺も社長に拾われた者同士なんでしょう? 今は俺だってプライベートなんで、深月さんと同じように社長のこと下の名前で呼んだって構わないじゃないっすか」
まるで否定されるのを封じるみたいに矢継ぎ早にまくしたてた石矢から真剣な顔で見下ろされて、そう訴えられてしまった。
石矢は私より数センチ背が高いから、恐らく一八〇センチ近いだろう。
そんな長身な石矢に甘えるようにそう言われた私は、グッと言葉に詰まった。
まさか自分と深月は同じ立場だと主張する石矢に、深月は私にとって特別な存在だから誰とも同列には出来ない……なんて明かすわけにはいかないではないか。
深月への想いは、私と深月二人だけの秘密。
わざわざ第三者に話してやるいわれはない。
だが、そうなると――。
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