27.嘘吐いてごめんなさい【Side:十六夜 深月】

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27.嘘吐いてごめんなさい【Side:十六夜 深月】

 結局僕は荷物持ちもさせてはもらえず、更には石矢(いしや)さんと言う全く知らない人と夕飯を共にすることになったのだけれど――。  リビングに入るなり部屋をキョロキョロし出した石矢さんが「将継(まさつぐ)さん、亡くなった奥さんの仏壇ってどこにあるんすか? 俺、手ぇ合わせたいんっすよ」と(ほが)らかに笑った。 「あー。(わり)ぃーな。私の寝室だ。こっち」  言いながら将継さんは石矢さんを連れて寝室に向かってしまったので、僕はスーパーで買ってきた肉以外のものを冷蔵庫に入れて(ご飯炊かなきゃ!)と思ったのだけれど……。 (ご飯って……どうやって炊くんだ……?)  とりあえず僕は炊飯器から内釜(うちがま)を取り出してみたのだけれど、米びつがどこにあるのかもわからない。  立ち尽くしたままスマートフォンでお米の炊き方を検索していると将継さんと石矢さんがキッチンに向かってくる声が聴こえてきたので、僕はびくっと肩を震わせてしまった。 「将継さんの奥さんって超美人だったんすねー。深月(みづき)さんも美青年だし……面食いっすか?」 「バカ言うな。たまたま星の巡りがいいってだけじゃねぇーの?」  二人が談笑しつつキッチンに入ってきて、スマートフォンと内釜を抱えた僕に将継さんが「深月?」と声を掛けてきた。 「あ、あの……将継さん、僕……ご飯を炊こうかなって、思ったんですけど……。やりかたわからなくて、それで……」  僕よりしっかりしていそうな歳下の石矢さんの前で、なんて情けないんだろうと思わず俯くと、将継さんは「深月、手ぇ怪我してんだから……二人共座ってろ、私がやるから」と、言うが早いがひょいっと僕の手から内釜を取り上げた。  だけど――。  そう言われた石矢さんが薄桃色の座布団が敷かれたダイニングチェア――僕の特等席に何の躊躇(ためら)いもなく座ってしまって。 (あっ……僕の席……) 「将継さんに(めし)まで炊いてもらえて焼肉囲めるなんてマジで嬉しいっす! あざーっす!」 (なんか……さっきから悲しいのは何でだろう……)
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