04.拾いネコ【Side:長谷川 将継】

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 とりあえずリビングに使っている仏間横の八畳間に彼を下ろすと、エアコンのスイッチを入れてから壁にもたれ掛けるように座らせた。  そうしておいて、せめて名前ぐらいは知りたいな?と思って。  まだ酩酊(めいてい)状態に見える彼の荷物は、マウンテンパーカーのポケットを膨らませた財布と、尻ポケットに突っ込まれたスマートフォンだけに見受けられた。 (ホント、何も持ってねぇな)  思いながら、聞こえているのかは定かではないけれど、「ちょっと財布ん中、見せてもらうぞ?」と一応声を掛けてから、彼の上着のポケットの中から財布を抜き取らせてもらう。  身分証明になるものはないかとあさってみた財布の中には、千円札が数枚と、それに紛れるようにして健康保険証があった。  とにかく名前ぐらいは知らないと、呼び掛けるのにも不便でいけない。  幾ばくかの罪悪感を振り払いながら、私は保険証を財布の中から取り出してみた。 「十六夜(いざよい) 深月(みづき)、性別は男、誕生日は八月十五日、か」  生まれ年を見れば、どうやら私より十一歳も年下らしい。 「ということはまだ二十七か……」  干支が一周するほど離れてはいないけれど、めちゃくちゃ若いな、と思う。  とは言え、世間一般的に言う同年代の子たちに比べると、かなり幼い印象を受ける青年だった。 「まぁ、とりあえずは……」  男性(どうせい)と確認できたことで、少しだけホッとして。 (まぁ、バイだとバレたら叱られるかも知んねぇけど……女の子が勝手におっさんに服を着替えさせられるよか本人の心理的ハードルは低いだろう)  そう自分に言い聞かせて、ほんの少し吐しゃ物が付いたままの彼の服を脱がせに掛かる。  黒のマウンテンパーカーはすぐに脱がせられたけれど、その下の白いカットソーと、黒のスキニーパンツを脱がせるのには、(おのれ)の性癖も手伝って若干後ろめたさを感じて。  何せ好みの顔だ。  同性だって性的対象になる身としては、どうしたって意識してしまうではないか。
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