679人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
そっと深月を抱きしめるようにして耳元で深月にだけ聞こえるよう囁きを落とせば、深月が小さく身じろいだ。
「将継さん……、僕……」
私の問いかけに深月が何か言おうと口を開いたと同時。
「もぉ! 二人とも何やってるんっすか? 早くあっちでお肉焼きましょうよぉー。俺、お腹ペコペコです!」
石矢が私たちの間に割り込むようにして不満を口にしてきた。
「深月さんもいつまでもそんなところにいるから将継さんに心配かけちゃうんっすよ? 将継さんがすっごく優しいのは知ってるでしょう? さっき俺が気を付けるように言ったこと、もう忘れちゃったんすか? ほら、行きましょう?」
言いながら、今度は私ではなく深月の手を掴んで無理矢理引っ張る。
石矢が深月の手を掴んだ瞬間、深月が怯えたようにビクッと身体を跳ねさせたのは、ただ単に深月が人見知りだからと言うだけじゃ済まされない気がして。
「深月……」
石矢に掴まれた深月の手首を、石矢の手ごと捕らえて呼び掛けた私に、深月は一瞬だけ瞳を揺らせてから「……将継さん、……行きましょう?」と言ってくる。
私は深月がさっき何を言い掛けたのかが気になって、肉なんて食う気分じゃないと言うのに。
深月に淡く微笑まれてうながされてしまっては、従うしかないじゃないか。
最初のコメントを投稿しよう!