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食卓では石矢を私が普段使っている椅子に座らせて、私は押し入れの奥に仕舞い込んであった折り畳み椅子を持ち出して来て座った。
長方形をしたテーブルの長辺側に深月と石矢が向かい合う格好で、私はそれを見渡す感じで短辺側に椅子を置いたのだが、それを見るなり石矢が不満げに言う。
「そこ狭いですよ、将継さん。俺、ちょっとあっちにズレますんで隣に来ませんか?」
「いや、ここの方が流しに近いからな。このままの方が都合がいい」
元より隣に座るなら、私は深月の横を選ぶ。
そう心の中で付け加えながらも、私はすぐ背後にシンクがあるこの位置の方が給仕がしやすいから……と適当なことを言って、石矢の誘いを断ったのだけれど。
深月の表情がずっと暗いのが気になって仕方ない。
深月は元々たくさん喋る方じゃない子だけれど、こんな風に黙り込んでいるのは明らかにおかしいのだ。
いつもならポツリポツリ。しどろもどろではあるけれどちゃんと今日あったことなんかを一生懸命話してくれるのに。
私は石矢がアレコレと話しかけてくるのを適当にあしらいながら、大人しすぎるくらい大人しい深月の様子が気になってたまらない。
(さっさとお開きにしちまいてぇな)
折角いい肉を買ってきたと言うのに、ちっとも味がしないのは、他に気掛かりがあるからだろう。
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