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「殴られて、蹴られて、深月はどう思った?」
「怖かっ……た、です……。お義父さんのこと、思い出して……でも、お義父さんとは、違った……。僕は……我慢すれば、いいやって……思ってたけど……将継さんのそばを離れるのは……我慢、したくなかった……です……」
将継さんの胸元の布地を掴んで、近くに居て欲しいのだと、上手く伝えられない言葉の代わりにギュッと握りしめた。
「他には? 他にはどんなことされたんだ?」
詰問口調なのに将継さんの声はどこまでも甘いから、口の中はとろとろと甘美な糖分が移ったかのように蕩けて、口に出してはいけないはずだった言葉が次々溢れ出す。
「言うこと、聞かないなら……無理矢理……犯すって言われて、……でも僕、やっぱ……何も感じなくて……痛くて怖いだけで……。そしたら……〝欠陥品〟って言われて……悲しかった……。そんなの、僕が一番、わかってるのに……」
「石矢は暴力だけじゃなくて、無理矢理深月を犯そうとしたっつーのか?」
僕だけの心に留めておこう、石矢さんの芽を摘んではいけないと思っていたのに、一度外れた箍はもうなし崩しに壊れてしまってどこまでも将継さんに泣き縋ることを止められなくなって。
「下半身を……触られました。……でも、何も反応しないから……不感症だ、欠陥品だって……。だから、突っ込んでやるって言われて……どうしよう、って縮こまってたら……将継さん、帰ってきて……くれました……」
今更のように、あと一歩将継さんの帰りが遅かったら僕は石矢さんに無理矢理暴かれてしまっていたんだという恐怖に改めて身体中を震わせると、将継さんは額に、瞼に、濡れた眦に、頬に宥めるように唇を下降させた。
「深月が優しいのはすげぇよくわかってる。わかってるけどな、罪は罪なんだ。私は深月にそんなことした石矢を無罪放免にしてやれるほど寛大じゃねぇんだわ」
「……でも、そしたら石矢さん……、どうなっちゃうんです、か……?」
問うと、将継さんは真摯に僕を見つめた。
「自分を犠牲にしようとしなくていい」
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うなの、ちろるそれぞれのエッセイで将継さんと深月くんのイメージ画像を載せていますので興味のある方は是非!
将継さん(うなの)
https://estar.jp/novels/26049096/viewer?page=721
深月くん(ちろる)
https://estar.jp/novels/26111627/viewer?page=67
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